事業主が従業員に給与明細を渡さなければならないのは法律上 強制?任意?
労働基準法には「事業主は従業員に給与明細を渡さなければならない」とは書いてないですね。片や「賃金台帳は作成しなければならない」と決められていて、記入すべき事項までバシッと事細かです。
[賃金計算期間][労働日数][労働時間数][休日労働時間数][早出残業時間数][深夜労働時間数][基本賃金][所定時間外割増賃金][手当][臨時の給与][賞与][控除金][実物給与]
また、「賃金台帳は作成して3年間は保存しなければならない」となっています。
労基法には定めがありませんが、給与明細を渡さなければならない根拠は、労基法ではなく労働保険料徴収法、健康保険法、厚生年金保険法、所得税法に「給与から控除した金額が分かるように支払明細を渡しなさい」となっているためです。
労働保険の保険料の徴収等に関する法律(賃金からの控除)第三十二条 (略)事業主は、労働保険料控除に関する計算書を作成し、その控除額を当該被保険者に知らせなければならない。
健康保険法(保険料の源泉控除)第百六十七条 (略)3 事業主は、前二項の規定によって保険料を控除したときは、保険料の控除に関する計算書を作成し、その控除額を被保険者に通知しなければならない。
厚生年金保険法(保険料の源泉控除)第八十四条 (略)3 事業主は、前二項の規定によつて保険料を控除したときは、保険料の控除に関する計算書を作成し、その控除額を被保険者に通知しなければならない。
所得税法(給与等、退職手当等又は公的年金等の支払明細書)第二百三十一条 (略)居住者に対し国内において給与等、退職手当等又は公的年金等の支払をする者は、財務省令で定めるところにより、その給与等、退職手当等又は公的年金等の金額その他必要な事項を記載した支払明細書を、その支払を受ける者に交付しなければならない。
これで給与明細を渡さなければならない根拠はわかりましたが、この件を検討するときにもう一つ取り上げられる労基法に関する通達があります。
昭和50.2.25基発112号<賃金の口座振込み>
口座振込みを実施する使用者に対しては、次のとおり指導されたい。
1 口座振込みは、書面による個々の労働者の申出又は同意により開始し、その書面には次に掲げる事項を記載すること。
(1) 口座振込みを希望する賃金の範囲及びその金額
(2) 指定する金融機関店舗名並びに預金又は預金の種類及び口座番号
(3) 開始希望時期
2 口座振込みを行う事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合と、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者と、次に掲げる事項を記載した書面による協定を締結すること。
(1) 口座振込みの対象となる労働者の範囲
(2) 口座振込みの対象となる賃金の範囲及びその金額
(3) 取扱金融機関の範囲
(4) 口座振込みの実施開始時期
3 使用者は、口座振込みの対象となっている個々の労働者に対し、所定の賃金支払日に、次に掲げる金額等を記載した賃金の支払いに関する計算書を交付すること。
(1) 基本給、手当その他賃金の種類ごとにその金額
(2) 源泉徴収税額、労働者が負担すべき社会保険料等賃金から控除した金額がある場合には、事項ごとにその金額
(3) 振り込んだ金額
4 振り込まれた賃金は、所定の賃金支払日の午前10時頃までに払出しが可能となっていること。
5 取扱金融機関は、金融機関の所在状況等からして一行に限定せず複数とする等労働者の便宜に十分配慮して定めること。
この通達は、給与を口座振込で支給する場合のことについてのものですが、3の(1)~(3)に「支払いに関する計算書の交付」について定められています。
この通達・・・何か気になるのでもう一度(ジロリンチョ・・・)とよく読んでみると、、通達の2が気になりますね。給与の支給を口座振込で行うには、労使協定が必要とされています。