労災にあって健保にない「通院移送費」
業務災害について給付を行う労災保険が、業務中ではない通勤途上にまで保険給付を行うように なったのは昭和48年の労災保険法改正からです。このことだけ見ても労災は手厚いイメージがありますが、労災保険にあって健康保険にないものとして通院費があげられます(健保にも 移送費というものはありますが内容が異なります)。
労災保険が通院費を支給するのは、自宅または会社から片道2km以上かつ同一の市町村内の病院 (労災指定医療機関)に通院する場合です。
そう言いながらも、市町村内に適切な病院がなければ隣接する市町村でもいいとか、同一市町村 の病院よりも隣接するところのほうがより通院しやすいときは同一市町村内でなくてもいいとか、片道2km未満でも正当な理由があるようなときはいいとか、支給要件についてはだいぶやさしい印象 があります。
平成20年11月からはこのようになりましたが、それ以前は2km以上4km未満の制限があって、4km以上の病院に通いながら通院費を請求すると、労災は病院を変更するようすすめていたようです。それを変えたのは、医療の専門化・高度化や交通の利便性の高まり等により傷病労働者の通院事情が 大きく変化したためだとしています。労災保険は労働者を保護する保険だからでしょうか、意外と柔軟性がありますね。
請求は「療養の費用請求書」の書類で行い、これに労働基準監督署で用意されて いる「通院移送費等請求明細書」を添付します。通院費は、通院に要した費用の実費相当額が支給されます。電車やバスなどの公共交通機関は 料金がはっきりしていてわかりますが、タクシーやマイカーは少し手がかかります。
タクシーの場合は「通院移送費等請求明細書」の『傷病の状況』欄に理由を記載し、さらに領収書も あわせて添付することになります。給付されるかどうかは、労基署でこの内容を検討し、傷病の状態によって判断します。
マイカーの場合は、この用紙に必要事項を記入し請求額の根拠を示します。なお、マイカー使用の単価は距離1kmあたり37円です。
マイカー通院のルート上に有料道路があったとしても、上記の1kmあたりの費用以外は何も出ませんので、高速道路料金とか有料道路代などは支給対象外です。